とっておきの不思議なお話 15

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本の中の大冒険                   A.Y

  ぼくがかよっている学校には、「まほうの本」という本がある。そして、「まほうの本」のページを開くと、本の世界にタイムスリップするんだ。
本の内容も、どこにあるのかもまだ、誰も知らない。ぼくのおじいちゃん以外は。  

ある日、ぼくは放課後、学校の図書室で本を借りることにした。本棚を探っていると、おくのおくの角の本棚に大きい本の後ろにまるで隠れているように倒れている本があったんだ。その本はほこりまみれで、もうずいぶん人に読まれていないようだった。
ぼくがその本のほこりを払うと表紙は真っ白で何も書かれていなかった。
「なんだか気味が悪いな。」
ぼくはこわかったけど、本を開くことにした。すると、突然本が光りだしてぼくは図書室から消えた。  

気がつくとジャングルのような場所にいた。周りを見回しても誰もいない。
「ここはどこ?」
「まさか......。」
ごくの頭の中は、あの話のことでいっぱいだった。
「うそだろ。そんなわけない。」
ぼくはジャングルの中を走り抜けた。走っても、走っても周りは気ばかりでいっこうにゴールが見えない。ぼくはうずくまった。ふと顔を上げるとむこうに誰かがいた。よく見るとぼくの年と同じくらいの女の子がいた。
「君はだれ?」
女の子は何も言わずに歩き出した。ぼくは、あわてておいかけた。女の子についていくと向こうに光が見えた。ぼくは女の子を抜いて走って光がさす方に行った。そこには少し変わった建物があった。家のようだ。ぼくは、女の子にお礼を言おうと振り返った。でも、そこには誰もいなかった。
「なんだったんだ......。」  
ぼくは気になったけど、前に進むことにした。  
ぼくは、家の周りをウロウロしていた。
「誰かいないかな。」
そう思っていたら子どもの声がした。それも、四,五人くらいだ。
「ラッキー。これで戻れる!」
ぼくは声のする方へ走って行った。
「お兄ちゃん誰?」
一人がそう言うと残りの子がふりむいて
「何、何?誰かいたの?」
「うん。」
「誰、誰?」
ぼくはおどおどしながら聞いてみた。
「ここはどこなのかな?」
子どもたちは、キョトンとした目で言った。
「ここはドリーム王国だよ。お兄ちゃんはどこから来たの?」
ぼくは、どう答えればいいのか分からなかった。あわてて出した答えは、
「日本っていうところだよ。」
「日本?聞いたことがないな。まいっか。」
「お兄ちゃんは何しに来たの?」
「何しにって、何だろう。」
思えば、図書室であの本に出会ってここにいるわけで、何をしに来たのか、まだ、わかっていない。そんなことを考えていたら、ぼくの真上に紙が出て来て、ゆっくりとおちて来た。ぼくはその紙を受け取った。よく見ると手紙だった。それには、
「君はこれから起きる危機から守る勇者としてこの世界に来てもらった。とまどっているかもしれないが、がんばってくれ。幸運を祈っている。」
と書いてあった。
「ぼくが勇者!?危機!?守る!?幸運を祈るって、どういうことなのかな。」
ぼくは、とまどった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「だいじょうぶ?」
「その手紙に何書いてあったのー?」
一人が手紙を取ってしまった。
「あっ。」
「えーなになにー勇者!?お兄ちゃん勇者さんだったの!?」
「いやーそれは。」
「えーすごーい。」
ぼくの話も聞かずに次々と話が出る。
「なんだなんだ?さわがしいな。」
向こうから背の高い、男の人が話しかけてきた。
「あっ。リキ様。」
「リキ?」
「やー。おれはリキ。おまえの名前はなんっていうんだ。」
名前を聞かれて僕は、
「春。佐々木春です。」
「シュン?......どこかで聞いたことがあるな......。」
「えっ。」
「そうだ。シュン様だ。失礼しました。あのような口のきき方をしてしまいすみません。」
「えっ。どうしたんですか。」
「あなた様は、あの伝説の勇者。シンイチロウ様のお孫様。シュン様でございますね。」
「はっはい。でもなでぼくのおじいちゃんの名前を知っているんですか。」
「あたり前です。今からちょうど七0年前。ここドリーム王国の危機を救ってくださったのですから。私はまだ生まれてはいませんでしたが、父から何度もそのころの話を聞いていたので、よく知っています。」
「えっ。おじいちゃんが?そういえば本の話をしてくれたのも、おじいちゃんだったな。」
そんなことを考えていたらリキさんが、
「さっ。こんな所ではなく、王宮に行ってゆっくり話しましょう。私が案内します。」
「えっ。王宮!?王宮に行くんですか?」
「はい。なにかご不満でも?」
「あっいや。なんでもないです。」
そのままぼくは、リキさんを追いかけた。  
王宮に着くと、まず、王様にあいさつをした。
「王様、子の方がシュン様でございます。」
「しゅ、春です」
きんちょうしながらもあいさつが出来た。
「話は聞いておる。よく来てくれた。まあ座れ。君のおじいさんの話をしよう。今から七0年前、ここドリーム王国に巨大なドラゴンが出現してな。そのドラゴンは、火を吹いて、ドリーム王国を火の海にした。だが、シンイチロウさんがドラゴンを封印してくれてな。今では誰もが知っている伝説じゃ。」
「そんなことがあったんだ。」
「だが、なぜ君がまたここに来たのか分からないな。まさか、あのドラゴンが復活するのか?」
「そんな......。」
「あんなことがまた起きたら、この国はほろんでしまう。」
周りがザワつき始めた。それに答えるように地面が揺れ始めた。
「なんだなんだ。」
あわててまどから外を見ると、何やら巨大な赤い物体がジャングルの中から、出て来たんだ。
「あれはなんだ。」
よく見ると手足があって、羽もついていて、顔もある。
「生き物?」
「あっ、あれは......。」
王様がビクビクしながら言った。
「70年前のドラゴンじゃ。」
「そんなはずはありません。あのドラゴンはもう封印したのですから。」
だけど、いくらそう考えてもあれはどこからどう見てもドラゴンだった。
「どうしよう。」
まだ、ドラゴンは眠っている。今ならドラゴンを止められるかもしれない。
「そうだ王様、70年前はどうやってドラゴンを封印したんですか。」
「それが、全く覚えてないのじゃ。」
「そんな......。」
誰もがもうダメだと思った時、またあの時と同じように、ぼくの頭の上から手紙が落ちて来た。その手紙には、
「三つのつるぎが重なるとき、光り輝くつるぎは我らを勝利へと導いてくれるだろう。」
と書いてあった。
「三つのつるぎ......それを見つければドラゴンを封印できるのか?」
「失礼します。」
リキさんが手紙を読んだ。
「三つのつるぎ......あのことかな。」
「リキさん、なにか知ってるんですか。」
「ドリーム王国には伝説のつるぎというのがあるんです。そのつるぎは三つあって、炎のつるぎ、水のつるぎ、光のつるぎの三つです。そして、そのつるぎが合わさったら強力な力がわくという伝説です。」
「そんないすごいつるぎなんだ。じゃあそのつるぎを今から探しに行きましょう。」
「でも、そのつるぎがある場所は分からないのです。」
「じゃあどうやって探せばいいんだ......。」
手紙をよく見ると地図があった。それは三つのつるぎがある場所を示していた。
「よし。この場所に行きましょう。」
「はい。」
ぼくは、急いで王宮を出た。
「まずは、水のつるぎがあるこの湖に行こう。」
走っていくと、そこはとてもきれいな湖で水が透けて中の小石や水草がよく見える。
「こんな所につるぎがあるのか。」
探し始めるといきなり、湖の中から水の竜が出て来てこう言った。
「私は湖の守り神、水竜だ。そなたたち、何を探しているのだ。」
いきなり出てきたもんだから、ぼくはおどおどしながら言った。
「み、水のつるぎです。」
「水のつるぎ......。」
リキさんが言った。
「何か知っておられるのですか。」
「水のつるぎは、渡せん。」
「なぜですか?」
「水のつるぎはこの湖の宝だ。簡単に預けられるか。」
「では、なにかぼくにできることがあれば言ってください。そのかわり、見つけ出したら水のつるぎと交換してください。」
「ほう。ならば、この湖の中でなくしてしまった私の水玉を探してくれ。」
「はい。......水玉ってなんですか?」
「水玉とは、それぞれの竜がもっている宝のようなものだ。さきほどの地鳴りで落ちてしまったのだ。」
「分かりました。」
ぼくはリキさんと湖の中にもぐって探した。ぼくは水中を泳ぎながら周りを見渡してみた。すると、向こうが一瞬光った気がしたんだ。急いで光った方向に行くと、なにやら青色の小さな丸のカプセルのようなものがあった。それをもぐって取ると、さっそく水竜に見せた。
「これですか?」
「おお、これだ。これが水玉だ。」
「では、水のつるぎを貸してもらえませんか。」
「いいだろう。」
水竜がそう言うと、ぼくの目の前に水のつるぎが現れた。それを受け取ると、水竜にお礼を言って、ぼくは火のつるぎがあるという砂漠へ走った。
「急がなくっちゃ。」
まだドラゴンは目覚めていない。
「この調子で三つのつるぎを集めよう。」
「はい。」
砂漠に着くと、そこにもまた、竜がいた。そして竜は、
「私は、炎の守り神、火竜だ。そなたたちが探しているものは、これか。」
そう言うと火竜は炎のつるぎをぼくたちに見せた。
「そ、それです。ぼくたちは炎のつるぎを探しています。」
「ならば水竜と同じように私の炎玉も見つけてくれぬか。」
「はい。」
ぼくとリキさんは砂漠の暑さにたえながら炎玉を探した。ぼくは砂漠の砂を必死に掘った。コツン。
「んっ?」
リキさんの声がした。
「なにかあったんですか?」
「いや、何かが当たったような......。」
ぼくはリキさんが掘っていた穴をかき分けた。そこには赤い玉があった。
「これ......か。」
その玉を火竜に見せると、
「それだ。ありがとう。」
と言って炎のつるぎと交換してくれた。
「よし。最後は光のつるぎだ。」
ぼくは光のつるぎがあるという森に行った。やっぱりそこにも竜がいた。そしてその竜は、
「私は光の守り神、光竜だ。そなたたちが探しているものは光のつるぎだろう」
「はい。 「だが、光のつるぎは今の状態では使い物にならん。」
そう言いながら光竜は二つに割れた光のつるぎをぼくの前に見せた。
「なぜこうなったんですか。」
「七0年前、光のつるぎは水のつるぎと炎のつるぎとでドラゴンをたおした。だが、光のつるぎはそこで力を使いはたしてしまったのだ。そこから回復するためには一00年必要なのだ。七0年では足りん。」
「そんな......。」
ここで終わりなのかと思ったその時、向こうの木漏れ日にあの時の少女がいた。
「君は......。」
少女は目を閉じた。すると光のつるぎが光出し、二つに分かれたつるぎが一つになった。
「ありがとう。」
少女は何も言わずに消えた。
「つるぎが直ったならそなたたちにあげよう。」
ぼくは、光のつるぎを受け取った。つるぎが三つそろったらあとは神の台に行って三つのつるぎを重ねればいいだけ。そう思っていると突然、
「ガァー。」
という音がした。それは、ドラゴンの鳴き声だった。
「急がないとドラゴンが。」
「早く神の台に向かいましょう。」
走りながら上を見てみるとドラゴンが羽をバサッバサッと鳴らしながら空を飛んでいた。森から神の台までは遠く、走っても間に合うかどうか分からなかった。ドラゴンは火を吹き、村に火をつけた。
「早くしないと手遅れになる。」
山道をかけ上り、てっぺんにある神の台に向かって走り抜けた。
「あともう少し......がんばろう。」
そう思った時、山頂が見えた。その真ん中に神の台があった。
「あぁこれで、やっと終わる......。」
頂上に着くとリキさんと水、炎、光のつるぎを神の台に置いた。すると三つのつるぎは光出し、その光は空に上がった。光がやんで目を開けてみると周りにドラゴンはどこにもいなかった。村についた火も消えていた。
「たおしたのか?」
リキさんが笑顔で言った。
「はい!」
「やったー!」
ぼくは思わず大きな声で言ってしまった。
「さあ帰りましょう。」
王宮に帰ると王様が待っていた。
「待っておったぞシュン。君は、ドリーム王国の英雄じゃ。」
その時、体がゆっくりと透明になっていった。
「ありがとうございました。私はあなた様を一生忘れません。」
こちらこそ、そう言おうとしたらぼくは消えた。  

気が付いたらぼくは、図書室の机に横たわっていた。
「夢だったのかな......。」 ぼくは、あのまほうの本があった本棚に行ってみた。
「あれ?」 そこには、あの本はなかった。そのかわりに「三つのつるぎ」という題名の本があった。
その本を開くとそこにはぼくがいて、リキさんがいて、ぼくの冒険がのっていた。
「夢じゃなかったんだ。」
ぼくはこの大ぼうけんは誰にも言わないよ。未来のぼくの孫以外はね。