とっておきの不思議なお話 16

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 『 妖怪たちとの思い出 』  I.F

 

  ドォーン、急に大きな音がした。直郁はどうしたんだ、と思った。

ここで話は数十分前にもどる。

「直郁―、今日放課後、かくれんぼやろう。」 いつもの高い声が聞こえてきた。声の主は達也。直郁の友だちだ。今日は、習っている柔道の練習もなかったので、

「別にいいけどー。」

と答えた。  

いつもかくれんぼの会場は家の近くの神社だ。直郁は、どちらかというとかくれんぼは苦手だった。だから今日は絶対に最後まで残りたかった。そうだ!いいかくれ場所を思いついた。神社のけいだいの中だ。いーち、にーい、おにの声がした。直郁は急いでけいだいに入った。中は、意外に暑かった。ひまなので、中を歩いていると、はじの方に、

「悪霊歓迎」

という札が貼ってある像を見つけた。直郁は思わず、

「なんだこりゃ?」

と声に出してしまった。そして、直郁はいたずら心がはたらいて、はいでやろう、と札をはいでしまった。ここで話は最初にもどる。  

外に出ようとすると、なぜか体が前に進まない。こわごわ上を見ると、そこには目と口と鼻があった。しかも、かべの中に。

「うわ~。」

直郁は腰を抜かしてしまった。そして、そのかべは

「こ~ん~に~ち~は~。」

と言った。少し落ち着いた直郁は、周りがふつうじゃないことに気がついた。すべてが逆なのだ。と言っても空が下にあるわけではない。右にあるものが左に、左にあるものが右にあった。そしてかべと話すうちにここは現実の世界じゃないことが分かった。そしてそのかべは、「ぬりかべ」という有名な妖怪だった。気が付くと、周りには他の妖怪もたくさんいた。一つ目小僧、ろくろ首、のっぺらぼう、そして外国の妖怪ゾンビ、キョンシーなどなど、とにかくたくさん妖怪という妖怪がいた。最初は、

「お前たち、なんなんだよ~」

と言っていた直郁もすっかり妖怪と仲良くなってしまった。最初に会ったぬりかべとは、特に仲良くなった。  

一方そのころ達也は、

「降参だ、直郁~出て来てくれよ~。」

と泣いていた。  

そんな達也の気もしれず、直郁は、妖怪たちと鬼ごっこをしていた。そして、ろくろ首に首でタッチをされかけた瞬間こけて、持っていた札を破いてしまった。これを見た妖怪たちは同時に、

「あ~~~。」

「どっ、どうしたんだよみんな?」

直郁が聞くと、ぬりかべは

「札をやぶいちゃうと、妖怪になるんだ~」

「へ?」

一瞬間があって、

「なにーーー」

と直郁の心のさけび。どうしたらいいんだ、とぬりかべに聞くと、魔女の所に行けば治してもらえる、とぬりかべが言った。すると、直郁は、

「じゃあ、早く魔女の家へ行こう。どこにある!」

かなりあせった直郁にぬりかべは、あせるとゆっくり話すというくせがあるので、

「よ~う~か~い~ど~う~り~さ~ん」

ゆっくり話すのにいらいらした直郁は話を最後まで聞かず、妖怪通り三丁目だな、と言って行ってしまった。ぬりかべは、あっとさけんだ後、三番地なのに、とため息をついた。  

直郁は、そんなことは知らずに、妖怪列車に乗り込んだ。

「次は妖怪通り三丁目~三丁目。」

車掌のぬらりひょんが言った。直郁は本当に妖怪だらけだな、と思った。  

ところが列車を降りてみると、魔女の家らしきものは、どこにもない。迷ったのかな、そんな不安が直郁の頭をよぎる。しょうがないのでタクシーを捕まえ、

「魔女の家」

と運転手の鬼に言うと、鬼はおどろいて、

「魔女の家まで、二百キロはありますよ。」

おどろいた直郁が、ちなみに場所は?と聞くと、妖怪通り三番地、と言われ、初めて自分の間違いに気が付いた。どうしようか困っていると鬼に、

「妖怪ヘリポートに行ったらどうです。近くなので送りますよ。キャラメル一個でどこでも行けますよ。」

と言われ急いでタクシーに乗り込んだ。ふと下を見ると、足が緑になって、ひれがついていた。やばい、妖怪になってしまう、と思いながらも、ヘリポート屋について、キャラメルを出すと運んでもらえることになった。  

魔女の家に着くと、さっそくチャイムを鳴らした。すると、おばあさんが出て来て、がらがら声で、あたしに何か用かい、と聞かれた。直郁はすかさず、人間に戻してください、魔女は即答。イヤだね。そんなやりとりが続いて、魔女は柔道でペットに勝てたらいいと言った。直郁はこれはラッキー、すぐ勝てる、そう考えた。  

でも、現実は甘くなかった。魔女のペットは、二メートルはあるゴーレムだった。 勝てるはずないと考えながらも、妖怪になるのはいやなので柔道をすることにした。直郁の得意技話一本背負い。でも二メートルの鉄の人を背負うほど直郁には力がない。関節技も、そもそもの関節がないので無理、あきらめようかと思った時、戦っている途中でゴーレムの弱点が分かった。手足の構造上、一回転ぶと立てないこと。これを使って固め技に持ち込んだ。すると思ったより簡単に勝てた。魔女は、チェ、しょうがないね、と言うと、

「ナオーレナオーレニンゲンニナレー」

うさんくさい呪文を唱えられたので本当に大丈夫かな、と思ったが、体は人間に戻った。安心していると、最初と同じドォーンという音がした。  

気がつくと神社にいた。達也が泣きながら駆け寄ってきた。夢だったのかな、そんな疑問が一瞬頭をよぎるが、手にはぬりかべの壁のかけららしきものを持っていた。直郁はこの変わった思い出は誰にも話さず、自分のものにしようと決めた。  

こんな感じの変な思い出を直郁は大切にしています。